【自動運転OS “Autoware”が作り出す未来】 第52回(2020/10/3) 無名塾(オンライン)   

テーマ:自動運転OS “Autoware”が作り出す未来

The future created by the Autoware operating system

講師:加藤真平(株式会社ティアフォー創業者CTO/東京大学准教授/一般社団法人The Autoware Foundation 代表理事 )

Shinpei Kato (Founder CTO of Tier4 Co., Ltd., Associate Professor of the University of Tokyo, President of The Autoware Foundation)

<代表武田の冒頭挨拶から>

ウィズコロナ(With corona)の時代と言われている。灰色のサイ(Gray Rhino)が走り回り、黒い白鳥(白い白鳥は当たり前だが)が飛び交う、混乱・戸惑い、気がつけばあちこちに危険な罠が仕掛けられている、と。しかし、これは正確な見方ではない。新型コロナによって世界が否応なくデジタル新時代に引きずり込まれたとすべきであろう。

  DATA Analytics、 バーチャル、サイバー空間、ネット、 AI 、量子技術といった、デジタルサイエンスやテクノロジーを骨子とするデジタル新時代について、これまであれこれ人口膾炙されているが、その多くは盲人が象の本体でなく、象の耳や尻尾、あるいは牙、足の爪を触り「ああだ、こうだ」と象について感想を語り合う「群盲象を評す」の寓話と同じである。いざデジタル時代に突入してみると、おおよそ予想されていたことからは全く違った展開が起きつつある。これが現在の状況。それだけに旧時代の人、あるいはアナログ時代のマインドではとても理解できない現象が次から次に起こりつつある。枯れすすきの影や鳥の羽ばたきに驚き、浮き足立つ、そういう状態である。

この新時代においては、モデルとなるものは何も無く、手探りで“枠作り”を行わなければならない。それでも確実に言えることがいくつかある。その一つに、この枠作りに参加しない人や企業・国家は、急速に時代に取り残される、一切のフリーランチはない(There are no such thing as a free lunch.=無料で得られるものはない)ということである。また早く着手できた者が全ての利益を得るという、厳しい先行優位Winner gets everythingの法則もある。

菅政権は9月の発足以来、改革に取り組みデジタルを推進しているが、これで十分とは言えない。デジタル先進国のアメリカは、第二次世界大戦以降、1970年代から1980年代にかけて巨大な国費を投じて様々な形で人づくりを行ってきた。中国は、鄧小平以後、40年かけてデジタルを推進してきた経緯がある。それだけでなく現在もコロナの混乱の中でこのデジタル推進を最大限に重視している。

日本は周回遅れの状態にあるだけに、彼らを上回るデジタル戦略を持って菅政権だけではなく、10年、20年継続してやり続け、その中で日本の存在価値を高め続けなければならないと考えている。

本日はデジタルのコア技術の一つ、自動運転について、ティアフォーの創設者である名古屋大学の武田一哉先生と東大の加藤真平先生に話していただく。

ティア(Tier)とはグループや階層という意味。自動車産業は部品を供給するサプライヤー、組み立てを行うメーカー、そして販売を行うディーラーに分かれているが、特にサプライヤーでは、大手の部品を供給する企業TierⅠ、そこに納入する企業TierⅡという言い方をすると聞いている。

お二人の先生方にはティアフォーと名付けた理由、どのような技術を開発されたのか、またビジネスモデルについても話をしていただく。加えて次の二つのこともお願いしている。一つは大学発ベンチャーをスタートさせるにあたり苦労された点、またAutoware(オートウェア)の世界戦略についてである。大学発のベンチャーが大事だと言われ、既にいくつかの上場企業も出ているが、欧米、特にアメリカに比べて日本ではその数が二桁少ない。その中でいろいろなソフトインフラが考えられてはいるが、これに付け加えることがあれば教えていただきたい。もう一つは、標準=Autowareを進めている内容についても話をしていただきたい。先ほど言ったように先行優位の法則は、標準化でもある。中国共産党は「中国2035計画」という標準化戦略を設定している。これも日本でぜひともやっていただきたい。