<連載>トランプ2.0政権が描く未来への地図  【第6回】不安の時代から新たな発展の時代へ – ギャラップ調査が示す意外な結果

<トランプ2.0政権は牙をむいた捕食外交か>

トランプ大統領が再選されてから、関税政策やウクライナ停戦に関する発言が世界に波紋を広げている。日本のメディアもこれらの動きを否定的に捉える傾向があり、たとえば『日経新聞』は「帰ってきたプロレス大統領——日本は焦らず備えを」や「米政権、牙をむく捕食外交——『王様』に逆らえぬ側近たち」といった論説を掲げている。また、イーロン・マスクが主導する政府効率化省(DOGE)についても「米国で暴れる『文化大革命』——政府破壊で外交にも影」と評している。

しかし、こうしたトランプの行動を表面的に批判するだけでなく、実は、その背後にある戦略や真意を見極める必要がある。トランプは単なる破壊者ではなく、FDR(フランクリン・ルーズベルト)やレーガンのように、アメリカ、そして世界を新たな発展へ導こうとする強い意思を持っている可能性がある。 

<トランプ大統領の目指す「アメリカ再興」>

トランプの「アメリカを再び偉大にする(MAGA)」というスローガンは、FDR(ルーズベルト)やレーガン時代の再現を目指しているように見える。

FDRが大統領に就任した1933年、アメリカは大恐慌の真只中にあり、国民は経済的な不安に覆われていた。FDRは「恐れるべきものは、恐怖そのものだ」と訴え、ニューディール政策を推進。第二次世界大戦にあたっては連合国をまとめ、アメリカ を世界のリーダーへと押し上げた。

レーガンが大統領に就任した1981年には、アメリカは日本や欧州からの輸出攻勢、またソ連からの軍事的脅威に直面していた。レーガンは「Morning in America(アメリカに朝が来た:新たな時代への展開が始まったの意)」と国民に呼びかけ、規制緩和や減税を通じて経済を活性化させるとともに、スターウォーズ構想によって軍事力を強化した。この結果、アメリカは経済的繁栄を取り戻し、ソ連の崩壊を導いた。

トランプもFDRやレーガンと同じように、経済・軍事・技術戦略を通じてアメリカを「再び偉大にする」ことを目指している。 

<トランプ2.0政権の具体的な戦略>

では、トランプ大統領は、どのような戦略で達成しようとするのか。これまでの彼の打ちだした政策を経済、技術、そして軍事・安全保障に分けて見ていこう。

  1. 経済戦略:関税と政府効率化による「双子の赤字」解消

トランプの経済戦略の中心は、長年アメリカの課題だった「双子の赤字」(貿易赤字と財政赤字)の解消である(解消後は、経済活性政策を導入する)。このため、これまでの自由貿易の流れに反して関税を導入し、国内産業の保護と雇用の創出を目指している。

関税政策は評判が悪く、従来の経済学者やメディアからは強く批判されてきた。しかし、北京大学のマイク・ペティスは「関税は必ずしも悪ではなく、財政や貿易収支の改善に役立つ可能性がある」と指摘している。米国の経済界でも「中国依存からの脱却」や「国内産業保護」のために関税が必要だとする声が強まっている。

さらに、イーロン・マスクが率いる「政府効率化省」は、財政赤字解消のために2兆ドルの予算削減と10万人規模の政府職員削減を計画している。USAID(米国国際開発庁)は、この方針の下で解体に追い込まれたが、元同庁長官アンドリュー・ナッツィオスは「解体ではなく根本的な見直し」を提言している。

                                                                                                                                         (図はChatGPTにより作成) 

  1. 技術政策: 「スターゲート計画」によるAIの加速開発トランプの技術政策の柱はAI(人工知能)の開発加速である。就任式翌日に発表された「スターゲート計画」では、今後10年間で4200億ドル(約60兆円)を投じ、汎用AI(AGI)の開発を目指している。汎用AIは「アーティフィシャル・ジェネラル・インテリジェンス(AGI)」と呼ばれ、すべての知的タスクにおいて人間を超える可能性があるとされる。この技術を開発した国や企業は、産業・軍事・研究で競争力を飛躍的に高める可能性がある(この話は後日、改めて取り上げていくので、ここでは深入りしない)。
  2.  軍事・安全保障政策: ウクライナ停戦と中国への対処

軍事・安全保障政策では、トランプはウクライナ紛争の早期停戦を目指している。たとえウクライナに不利な条件であっても、停戦を優先する背景には、「米国にとって最大の脅威はロシアではなく中国である」という認識がある。また、彼の閣僚は、それ以上の強い認識を持っている。

中国は2025年の国防予算を7.2%増強し、軍民融合政策を通じて最新兵器を投入している。また、中国は「グレーゾーン戦略」を南シナ海や台湾海峡から、インド・ブータンに接するヒマラヤ地域まで強化している。グレーゾーンとは、戦争と平和の中間領域をさし、戦闘機を投入した軍事演習や海警船の活動を通じて相手国を威嚇し、徐々に既成事実化を狙うものである。海警船は中国海警局が所有する警備艇をさすが、日本の海上保安庁の警備艇とは違い、一万トン級のもので武器も搭載している。対立国はこのグレーゾーンでボディーブローのように体力を消失していく。

トランプがFDRのように周辺国を団結させる戦略で中国へ対処するのか、それともレーガンのスターウォーズのような強硬策に出るのかは、まだ分からない。今後の展開を注目する必要があろう。 

<トランプ大統領の戦略に対する米国民の反応>

では米国民の反応はどうか。ギャラップ社が3月に行った世論調査がある。これによると、共和党支持者のトランプ大統領への支持率は58ポイントと調査を始めて最大の増加を記録した。一方、民主党支持者の支持率は急激に低下したが、アメリカ全体でみると、14ポイントの増加で、これも歴史的な増加幅である。米NBCも3月25日に発表する予定の調査でも、ほぼ同様の結果を米国民は示していることが分かる(NBCの調査方式は、フィーリングサーモメーター『Feeling Thermometer』と呼ばれている)。 

<では、トランプは歴史に名を残すか?>

トランプ大統領がFDRやレーガンと肩を並べる歴史的なリーダーとなるか、これは不透明である。失敗するリスクも多い。ただ、失敗したとしても、彼の挑戦は、現代社会の「矛盾」を浮き彫りにし、新たな時代への出発点となったと評される可能性が高い。

ここで哲学めくわけではないが、人間が作るシステムに「完璧」ということはない。これは、私たちが作る世界でも同じで、これまでの歴史を振り返ると約100年ごとに世界は大きな転換を遂げてきた。こう見ると、トランプの出現は「新たな世界」への幕開けを告げるものかもしれない。FDRが「恐れるべきは恐怖そのもの」と語ったように、今、私たち日本国民が恐れるべきは「不安そのもの」かもしれない。これまでの常識にとらわれず、米国民が反応しだしたように、ともに新たな時代づくりに取り掛かる時がきているかもしれない。