<連載>トランプ2.0政権の展望
2025年1月6日に米上下両院連邦議会の合同会議が開かれ、トランプ次期大統領の当選が正式に確定した。1月20日から新政権がスタートする。トランプ氏は大統領選に4年の間をおいて2回目の当選を果たしたことになるが、これは132年前のグローバー・クリーブランド大統領以来のことである。非継続大統領としては、米国の歴史上、二人目となる。
現在、日本のメディアはこぞってトランプ大統領の再登場を伝えている。中には「帰ってきたプロレス大統領 日本は焦らず備えを」、あるいは「トランプ氏再登板前夜、よぎる8年前の悪夢」と言った新聞の見出しもある。記事の内容は悪くはないと思うが、それにしても、仮にも一国の大統領に対して、このタイトルはどうかと思う。確かに、トランプ氏には、虚言癖・暴言癖、乱闘好き、何をしでかすか予測がつかない、といったイメージが定着している。しかし、スティーブ・ジョブズやイーロン・マスクほどではないにしろ、実業界で大成功をおさめた人物である。そのような人には、通常の理解を超えた全く異なる側面があることを忘れてはならない。
2016年の大統領選で共和党の選挙参謀であったケリーアン・コンウェイ氏は、トランプ氏は、「シンプルなマインドを持つ複雑な人」と表現した。つまり、「表にでてくることは単純だが、そこに至るまでにさまざまな思考を巡らせる人」と評している。彼の思考の一端は、今後の日本の科学技術・教育政策に多くの影響をもたらすだけでなく、日本の繁栄にも大いに関係があると考えている。
トランプ氏の政治・外交・経済面での思考について立ち入るつもりはないが、科学技術・教育に対するトランプ氏の見方をこのブログで全7回に分けて取り上げてみたい。
第1回は、トランプ大統領1.0政権時の科学技術・教育の政策について。そして、第2回以降は、1月20日からスタートするトランプ政権2.0の科学技術・教育について取り上げる。詳しくは次回以降になるが、イーロン・マスクだけでなく、ディビッド・サッソー、あるいはピーター・ティールといった生成AIやデジタル貨幣時代をもたらした人たちとそのグループを巻き込んだ一大体制についてである。トランプ2.0政権を「帰ってきたプロレス大統領」、あるいは「よぎる8年前の悪夢」といった程度の評価で済ませるにはあまりにも表面的で単純なとらえ方ではないかと思う。
―掲載コラムー
第1回:トランプ大統領1.0政権時の科学技術・教育の政策について(1月中旬予定)
第2回:トランプ1.0政権の科学技術政策とは(先端技術が国の発展の大もと、技術競争について)(1月下旬予定)
第3回:トランプ2.0政権の科学技術政策を考える人たち~帰ってきたヒーローたち(2月上旬予定)
第4回:AIとデジタル貨幣のCzar(皇帝)
第5回:WWE(世界最大のプロレス団体)の元CEOが米教育省長官になった理由
第6回:トランプ2.0政権がもたらす影響の意味と日本が備えるべきこと
第7回:進める科学技術と守る科学技術~研究セキュリティとは