メッセージ:新たな時代へ ~『複雑な繁栄の方程式』

◆武田のメッセージ◆                                                           

 この数年、私たちは、激動する世界を目の当たりにしている。確実に、世界は新たな時代に移行し始め、米国や中国、EUあるいは一部のグローバルサウスも含めて次の繁栄のための体制づくりにかかっている。その実現のための「テクノロジー」は、単なるIoTや半導体人工知能(Artificial Intelligence)といった個々の分野をさすのではなく、重要・新興テクノロジー(CET: Critical and Emerging Technologies)として、デジタルや半導体、AI、量子情報科学(QIS: Quantum Information Science)などの情報技術から、グリーンエネルギー、そして宇宙、創薬・医療など19の分野におよぶ新たな時代の繁栄を約束するテクノロジーの一群をさしている。

 米国バイデン大統領は、2021年の就任後のスピーチで、これらのテクノロジーをもつ企業や国が確実に繁栄を手にするとし、このCET導入の戦略作りを進めている。このCET導入のスピードとテクノロジー群によって新たな時代の経済・産業・社会・安全保障での繁栄が決まる。つまり、CETによる戦略が地政学の核となる時代に入ったのだ。しかし、CET導入は、米国でさえ自国だけでカバーしきれることが難しく、AIのルール・規制一つとっても、日米あるいはEUそして、英国でどうするのか、まだ決まっていないのである。ゆえにEUや日本、韓国など同盟国との連携で進める方向で動いている。

 私たちはシュムペーターやドラッカーから、『繁栄の方程式』の中でイノベーションがいかに重要かを学んできた。ただ、次の時代に向かうための方程式には、別な要因が必要になる。それは、イノベーションがもたらした新たな知識やテクノロジー群を多くの企業や国家にどう広めるかという「拡散(diffusion)」、そしてこれらを使いこなす「汎人材」をいかに作るかという大きな課題がある。さらに、この拡散や汎人材づくり(教育)の連携も必要になろう。

 いずれにしても私たちは、次の時代をつくる『複雑な繫栄の方程式』をより深く理解する必要がある。さらに、ここで問題をより複雑にしているのは、西側民主主義とは異なる体制をもつ中国の存在である。彼らは異なる方程式で動いていることも認識すべきことである。CET自体の複雑さと世界の地政学的な複雑さの中で、日米あるいは日欧州(EU+英・スイス)が連携し、規制・ルールを含めた民主主義の『繁栄の方程式』をつくる時が来ている。

<日本が心すべきこと>

 デジタルにおいて日本が欧米、あるいは中国、韓国に出遅れた理由の一つは、「オールジャパン」の体制づくりに固執しすぎたことである。 「オールジャパン」の言葉は素晴らしい響きをもつが、残念ながらCET導入においては機能しない。これまで同様のオールジャパン体制に固執し続け、CET導入においても出遅れるという愚を繰り返してはならない。この10年かけて日米の大学連携をグラスルーツでつないできた理由はそこにある。  

武田修三郎 記