【新たな時代の気象学ー予測から制御へ】第60回(2022/03/01)無名塾(オンライン)開催 講師:三好 建正先生(理化学研究所 計算科学研究センター・データ同化チームリーダー)

◆ 冒頭挨拶 塾僕武田修三郎◆

人類史上まれな激動期に入ったようだ。この原因を私は、人間の先祖返りが本当にあるのかどうかの鍔迫り合いから来ていると考えている。2月24日日本時間未明、ロシアのプーチン大統領は、ウクライナの南北東から一挙に攻勢をかけ、侵攻が現実のものとなった。彼はロシア軍にハイアラート(厳戒態勢)の命令を出した。

私は昨夜から今朝方にかけて、アメリカーEU間のインド太平洋における協力体制に関するオンラインのシンポジウムに参加した。米国からはインド太平洋担当のカート・キャンベル、安全保障担当のミラ・ダクホール、またEUからはアジア太平洋局長のガナ・ウィグラード、ガブリエル・ヴィンセンティンらが出席していた。会合ではウクライナ侵攻のこともあるが、インド太平洋において民主的体制や自由と法による支配体制は、強権的かつ狂信的な価値、専権と束縛による支配という制度的な挑戦を受ける可能性があると指摘。それを防ぐためいかにして民主主義国家が協力を進めるかという議論があった。次の紛争は、台湾海峡か、あるいは尖閣列島、または南西諸島のどこで起きるかわからないが、これらの紛争はロシアのウクライナ侵攻より、日本にとってさらに身近な危険となる。これは決してタカ派的な見方と決めつけることはできない。すでにドイツは、ノルド・ストリーム2の廃止と1000億ユーロの防衛費増とNATO2%目標達成へのコミットを表明している。日本が必要なのは軍事的側面の強化だけではない。我々は国をあげて専制国家を上回る科学技術と経済成長、そして次の時代をリードするAIや量子科学が発展するエコシステムづくりがより重要となってくるのである。

本日の講師、三好研究員がリードするムーンショットプロジェクトは、2050年までに世界をリードする日本の研究分野の一つである。繰り返しになるが、これらを日本での研究の発展を担保し、さらに外部から、ただ取りされることのないように、しっかりとしたエコシステムづくりのうえで行う必要がある(これは、決して日本の開かれた研究を否定するわけではない)。本日のモデレーターは科学技術振興機構の白木澤理事にお願いした。

◆まとめ◆
本日の三好研究員の講義を聞き、2050年の日本は、少なくとも部分的には大丈夫だと確信できた。私は対中国問題の専門家ではないが、日米のデジタルをどう進めるかについての戦略を考えるために米国での対中政策を巡っての議論を追ってきた。中国の科学技術戦略・計画、そしてこれらを巡る中国共産党内の議論は秘密のベールを被っているように見えるが、数年前から米国の研究者からの信頼の高い、いわば学術レベルと言える論文がでだしている。強権政権下の中国は、「マルクス主義は西側を凌ぐのだ」という共産革命以来の不動の信念のもと、各省庁間の軍民融合組織を作り、科学技術イノベーションについても戦略・計画をたてている。中国の民生研究と防衛・デュアルユースの間の壁は当初から撤廃されている。彼らは、世界の研究者のテーマを入念に調べ、それらを合法・非合法的に入手し、自分たちがre-innovateしたものと主張、発表し、自分たちの軍民両用への応用を図るやり方を行っている。 残念ながら、このスタイルの方が研究スピードが上がることも事実である。この状況下で、私たちがこれまで信じてきたオープンで民主的なシステムのもとでの研究をいかに守り、進めるためのエコシステム作りを行うかが重要となる。強権体制に対しては、競争もしなければならないし、また協力もしないといけないし、場合によっては対峙しなければならない。事が起こってからでは遅いので、日本の独自性の高い研究をどう守るのかの戦略・計画を民間や役所サイドの方々に真剣に考えてもらう必要があると思っている。