【7】5Gへの米国の態度と戦略(6)主要国の5G状況と政府の役割の重要性

先行優位を重視したDIB提案書では、中国、韓国、日本の状況に注目し、その状況を触れている。もちろん、その他の国の状況も触れている。

5G対応の国別比較

米無線通信業界団体CTIAは各国の5G対応に関する状況を、インフラ、投資、政府による支援などを指標に、上位10カ国を比較した報告書をまとめた。 Global Race to 5G, April 2018 https://api.ctia.org/wp-content/uploads/2018/04/Race-to-5G-Report.pdf

 

 ・中国の5G状況

提言書では、「中国政府や地方政府は5Gへの一連の積極的な投資とスペクトル割り当てといったイニシアティブを通じ、5G開発をリードしている…5年にわたる5G展開の設備投資に1,800億ドルを投資したほか、3つの地方政府はプロバイダーに200 MHzのミッドバンドスペクトルを割り当て、500 MHzのCバンドスペクトルの再割り当ても検討」したとしている。また、「主要な通信会社(China Mobile、China Unicom、China Telecom)を通じて5Gは既に導入が進み、2020年には正式な商用アプリケーションを展開する計画がある…現在、約350,000基の5G動作可能な基地局が展開された…また、ファーウェイはすでに10,000以上の基地局を海外に出荷している」とした。なお、より具体的なファーウェイをはじめとする中国企業の動きは後の章で取り上げる。

ついで、提言書では、中国5G戦略とは「中国共産党(CCP)の掲げる壮大な戦略の文脈で見る」べき、と指摘した。また、AI(人工知能)や量子コンピュータと同様に習近平の「中国の夢、チャイナドリーム」ビジョンと「Made in China 2025」ロードマップも、この重要な要素を構成している、とした。

なお、習主席をはじめとするCCPのリーダーたちと5GやAIでの関係については、この後のファーウェイやAIの章で立ち入り触れるが、ここではDIBの提言書では、「これら2つの分野(AIと5G)での失敗は、自分たち共産党政権に対する直接的・実存的な脅威と見なされる…5Gは、(既存の中国の)資本と労働集約型の製造型経済からイノベーション主導型へ変容させる可能性がある。また、外国投資への依存を減らした消費主導型経済の達成につながる…中国経済成長の鈍化と米国との貿易戦争が進行していることを考えると、CCPは5Gのような技術進歩イニシアティブをより積極的に追求するよう最大の圧力をかけている」としたことを確かめておく。

 ・韓国の5G状況

提言書は、韓国の動きも早かった、「韓国政府は、早い時期にスペクトルをオークションにかけ、またその民間とも共に通信技術での開発を急いでおり、5Gへの成熟度では中国に追随している」とした。また、「韓国政府は、早くから5Gへのロードマップを構築してきた…2014年に、2020年までに5Gの導入と展開を促進するために15億ドルをコミットし、2017年には5Gを一層促進するために、スペクトル計画(「K-ICT」)をリリースした」。更に、「韓国では、2018年の平昌での冬季オリンピックでの5G投資を行い、さまざまなネットワークトライアルを実施した。韓国の産業界もすでに4GおよびLTEネットワークテクノロジーの競争を促進しており、これらにより、5Gのさらなる急速な発展が促進されよう」、とした。

 ・日本の5G状況

提言書は、「日本を5Gの能力においては中国、韓国、米国に続いている」と位置付けている。日本の計画については、「ミリ波とサブ6オプションの両方を開発している(ミリ波は人口密度の高い地理的地域に適用されているが、サブ6は残りの領域をカバーする)」とした。また、「韓国と同様に、日本は東京オリンピックという2020年のタイムラインを中心に投資と活動の大部分を推進している」とした。5Gへのコミットメントと将来の展開については、2016年に総務省(MIC)が「2020年に5Gを実現するための無線政策」を発表したことも紹介している。

 ・その他の国の5G状況

提言書では、中国、韓国、米国、および日本が「第1グループ」としてリードしたが、他の国々でも5Gの展開では急激に追いついてきた、とした。特に、英国、ドイツ、およびフランスは「第2グループ」を構成し、シンガポール、ロシア、およびカナダが「第3グループ」を構成し、他の世界の国々はこれに追随している、と。

また、提言書では他の世界の国々でも、さまざまなタイムラインと利用可能なスペクトルのボリュームでスペクトル帯域幅を競売し始めているが、一方、5G導入を可能にするポリシーや戦略がないものあり、5Gの販売は2020年以降にずれ込むと予想している。