「崩壊するエネルギー文明:再点検」

タイトル:「崩壊するエネルギー文明:36年目のリビジット(再点検)」
(2011年11月に宣伝会議から出版発売)


この本のオリジナルは、36年前に私が34才の時にだしたものです。
当時、私はうっすらとですが時代の潮目が存在することに気づき、これを「無限から有限へ」と考えました。
それまでの「無限の石油」を前提とした時代は去り、「有限」を前提とした時代への変化があると。
当時誰もが石油は無限で、ただ同然だとした。
これは、原子力もそうで、原子力には原発の核分裂だけでなく核融合がありますが、誰もがすぐ原子力の時代が来ると考えていた。
風力や太陽エネルギーもそうで、無尽蔵で無公害だと。これらはまだコストは高いが、何れ、科学技術の発達で解決できると考えていた。
ただ、私はそうではなく、これらは石炭や石油と同じように公害をだす、コストも高い。
科学技術の発達によりできるとしても、それで解決できるのは限界がある、と。

ボールディングが指摘した通り、宇宙船地球号という前提で人口、環境、資源問題を考えなければならない、
そうでないと進んでも進んでも、進まないトレッドミル地獄に陥る、と(今回の本の表紙にはその象徴としてトレッドミルを使いました)。
実は世界の識人たちも、例えば、ベルは「脱産業化」、トフラーは「情報化の波」、ガルブレイスは「不確実性」とこの潮目を表現しました。
また、近年では「知識化社会」、「スマート化」、「グローバリゼーション」という言い方もされています。
喩え方は違っても、決して違ったものを見たのではなく、これを表現していったと考えています。

この潮目は決して消え去ることはなかった。逆に1980年代末のベルリンの壁崩壊後には急に近づき、世界を巻き込みだしています。
この後、経済は世界規模へ拡大と同時に不安定化し、世界での環境問題の顕在化、資源や領土を巡る対立が目立ちだしました。
これを世界の先行きが見えなくなったとするか、新たな世界の流れが始まったとするべきかは、時代観を有していたかどうかで決まります。
私は、時代は決して不動ではなく、大陸も時に動くように、時代は時として変わる、という時代観を持っています。

既に述べましたように、来るべき時代の本質は「世界はフラット」、つまり“人間の能力は国による差はなく基本的には同じ”にある。
これまでの欧米や日本が主役の民主制から、世界のあらゆるものが主役の民主制へのシフトとも言えます。
問題は、日本でこの本質が十分に理解されていないことにあります。いつの時代にも時代錯誤は、没落を伴います。
例えば、日本はそれまでの高度成長から一転し、長期にわたる経済低迷、政治不信、そしてついには社会的先行不安を抱える状況に陥っています。
それは、今年3月の東北大震災の津波、そして福島原発事故による放射能問題がエネルギー問題、
原子力発電の是非といった問題をもたらし、一層の混沌化の中にあります。

私は、この日本が再生の道を歩むためにも、36年前に私が気づいた潮目が現実のものになっていることを
多くの人に気づいてもらう必要があると確信しリメイクのうえ出版することを決意しました。
36年は長く、本来なら大幅に手直しをすべきなのですが(例えば、当時世界の人口は38億人、
2011年10月には70億人突破)、手直しを最小限にとどめ、その代わりに再生への道は育人研心
(心を研ぎ、新しい時代で活躍する人財を育む)しかないという部分を加筆しました
(より本格的な育人・研心論は、現在まとめており、後日、本の形でお読み頂こうと考えています)。

有り難いことに、既にメールや手紙で『36年前の本なので古いと思っていたが、驚くほどの新鮮さを感じた』、
『これほど明確にシグモイド曲線を使って、さまざなエネルギーや資源の限界性の問題を「結論から」論じている著作はないのではないか』、
『大きな意味で技術から見た文明史を感じた』という感想を送ってくださっています。
また、アマゾン書評にも『日本の全ての人に読んでもらいたい』といった過分な推奨も頂いたことをフェースブックで知りました。
一人でも多くの方々に読んで頂き、少しでも日本の再生へのきっかけになれば幸甚に思います。