パラダイムシフト期の発展のために

新しい時代へ研心・育人

パラダイムシフト期には、科学技術、イノベーション、そして政治・経済・産業・財政基盤の強化が大事だとされていますが、
ここでも基本は人作り、それを可能にする教育にあります。時代がシフトするたびに言葉も作りかえられます。
例えば、教育は政治、経済、産業といった言葉と同様に、全て江戸から明治へのシフト時に作られたものです。
新たなシフトが一段と深化した30年後は、現在の皆さん方が想像もつかない新しい言葉を使い、議論しているでしょう。

話を戻しますと、私は別に先駆者ぶるわけではないのですが、教育という言葉の代わりに“育人”、勉強の代わりに“研心”という言葉を使いだしています。
ここでは深く立ち入りませんが、パラダイムシフト期のいま、“教育”というこれまでの概念では表せない想像もつかない広がりがでたからです
(例えば、教育は学校で行うものから、家庭から職場、そして自己研心へ)。
更に、新し時代に活躍できる人財=“フロニーモス”という言葉は皆さんがイメージするような一流の大学をでた博識の秀才を指しません。
アップルの創立者故ジョブズがこの走りと言えますが、彼はオレゴン州のリード大学という決して一流でない大学、それも1年で中退し、後は自己研心したのです。
フロニーモスという言葉は新しいものではなく古代アテネのアリストテレスが使いだしたものです。

また、私は使い捨てのニュアンスがある人材ではなく、人は財を示唆する“人財”も合わせ使っています。
なお、これらの動きは既に世界にも見られ、育人はDevelop Humanity, 研心はCreating Capabilitiesと呼ばれだしています。
育人のポイントは、単に知識だけでなく、身につけるべき徳(定着したものの考え方)にあります。
例えば、新しい時代の基本とは、単に情報技術を扱えるではなく、エンゲージドした市民(engaged citizen)としての徳をもっているかです。
エンゲージドした市民とは、言われている市民と違い、アクティブに時代作りに参加する人を指し、先のフロニーモスと同じです。
この徳には、情報を理解(コンプリヘンド)する心、人(もの)と人(もの)を繋ぐ(ネットワーク)する心や時代を見抜く(パシーブ)する心、
理性を持ち生涯学べる科学(サイエンス)する心、自らを厳しく点検(セルフ・イグザム)する心、等があります。

聞慧、思慧、修慧

育人体系を再構築することは日本にとっても一大事業です。
ただ、幸いなことに私たちは歴史に学ぶことができます。
現在のギリシアにはその面影はありませんが、古代アテネにはこれを行った哲人ソクラテスや弟子のプラトン、
あるいは孫弟子の先のアリストテレスといった哲人が出ました。

背景には当時、人類初の民主制が誕生し、この新しい時代で活躍するための徳を持つ人を育成しなければならないという喫緊の課題がありました。
私たち日本人が誇るべきことは、この流れとは全く別に、江戸時代にこれを行った先人たちがでていたことです。
(興味ある人は拙著「フロニーモスたち」をお読みください)。この育人体系は完成したものではなかったのですが、それでも素晴らしい成果をもたらしました。
幕末から明治にかけて、数多くのフロニーモスたちがでて、中国・インドなどの超大国が没落する中、アジア唯一の近代へのシフトを成し遂げました。

今年9月から京都大学に発足する大学院の名は思修館です。研心は育人に欠かせません。
科学(哲学)的な研心(心を研ぐ)法を初めて議論したのはアリストテレスで、3段階であるとしました。
これは仏教でも同じで、これを聞慧、思慧、修慧と3段階に分けています。
なお、このテーマは現在の育人の中で最も重要なテーマで、例えば、著書ベストプロフェッサー
(元のタイトル::What the best professors do)を出したケン・ベインは、新著What the best students doで研心をもたらす条件を取りあげています。
このように歴史(Historyの本来の意味は‘事実に基づいて調査’する)と現在の最先端の育人・研心論をもとにフロニーモス作りを行う必要があります。
私は、今年9月に発足する、京都大学大学院思修館でも合わせフロニーモス作りのお手伝いをさせて頂くつもりです。

武田アンド・アソシエイツは、故平岩外四会長(日本産学フォーラム創立者)のご示唆を受け発足したものですが、
「研心塾」作りのお手伝い(日本内外の研心塾ネットワーク作り)、心の科学(認知科学)をもとにした育人手法の研究、
育人・研心運動(講演、シンポジュウムによる育人・研心の普及)の3点を最重要課題の活動として進めています。

<研心塾作り> (研心塾facebook

みなさんが心を研く場、「研心塾」が必要です。また、相互に学び・競うことも必要です。
武田アンド・アソシエイツは、この塾作りと日本内外の塾とのネットワーク化を目指します。
江戸の石田梅岩による石門心学の塾は当初ほとんど人が集まりませんでしたが、晩年には四、五〇人が集っています。
孫弟子の時代になると、石門心学の活動は諸国に広がり、旗本大名から農民・町人・女・人足にいたる広い層が踵(きびす)を接して講席に出始め、来るべき時代への研心を始めた。
私も日本再生のためには、若い学生だけでなく、教師、研究者、政治家、経済人、中小企業の経営者、主婦たちも含めての育人研心が必要だと思っています。

<育人手法と研心の研究>

育人研心は経験より、科学が大事になります。
そのような科学などあるのかと疑問に思う人たちがいるかもしれませんが、あります。
既にその一部は述べましたが、この30年認知科学が急激に発展し、人間、知性、精神、学習とは、というものの理解が飛躍的に深まっています。
例えば、ノーベル物理学賞者ワイマンを始めとする素晴らしい科学者たちは、これらを基にして育人研心の科学を深めています。
武田アンド・アソシエイツは彼らとも連携し学び深めていきます。

<育人研心運動の普及>

世界がフラットな時代に発展を遂げる企業・社会・国家には、多くのエンゲージドした市民、つまりフロニーモスたちが必要です。
武田アンド・アソシエイツは、啓蒙活動として、セミナー、講演会、出版等を通じて行います。
江戸・明治には素晴らしい育人研心のつながりがあったのですが、これからは国内だけでなく、
海外へも広げ、エンゲージドした市民たちが直接世界のエンゲージドした市民たちと関係構築作りも同時に進めていきます。